俺と結婚しろよ!
森井さんはあたしたちを元気付けるのではなく、むしろ貶して去っていった。
バタンと閉じられた扉を見て、悠真が舌打ちをする。
「俺、頑張ってんのにな」
それはあたしたち三人とも同じ。
それでも、あたしはまだマシ。
ボーカル兼ギターだから。
歌声はマイクで拾ってもらえるから。
だから、みんなの分も頑張らなきゃと思った。
頑張って、認めてもらうんだ。
歌だけじゃない、いつかは演奏も!!
「仕方ないわよ。
こういう世界だから」
腕を組んで傍観していたマネージャーの村木さんが、ようやく口を開く。
サバサバして、仕事が出来そうな女性だ。
どちらかと言うと、クールなタイプ。
痛いところを冷静に突っ込んでくる。
「いつまででもショゲてないで、トークで巻き返しな」
「そっか……トークか……」
大輝が繰り返す。
「それと。楽屋を回って挨拶してこないと。
新人ならなおさら。
芸能界は縦社会なんだから」
「はい……」
あたしたちは元気のない返事をして、部屋を出た。