俺と結婚しろよ!
二人の言いたいことは分かる。
俺が、一人の女性に本気になっているからだ。
咲良にはバレたくないけど、俺、今まで相当遊んできた。
そんな俺が、こんな中学生みたいなマネをしている。
「賢一。
まだ咲良ちゃんに手ぇ出してないの?」
慎吾の問いかけに頷きながら、自分でもおかしいと思った。
手ぇ出してないどころじゃねぇ。
手しか繋いでねぇ!
俺、どうなってんだ。
「……すげぇよな」
俺はポツリと呟いた。
そして、数ヶ月前の出来事を思い出す。
女遊びに疲れていたところ、通りすがりのばーちゃんが、引っ越して新車買えって。
金も貯まっていたから、なんとなくその通りにした。
そうしたら、咲良に会った。
あのばーちゃん、すげぇよ!
そんな馬鹿なことを考えていた俺の耳に、開演を告げるアナウンスが聞こえた。
いよいよだ、咲良。
俺は何も心配してねぇ。
咲良のステージを、楽しみにしている。