俺と結婚しろよ!
ー咲良sideー
ヤバい。
こんな広いホールで、ライブなんてしたことがない。
イヤーモニターだって慣れないし、ちゃんと歌えるのかな。
そう思ったけど……
気分はだいぶ落ち着いていた。
「咲良、大丈夫か?」
心配そうな顔の悠真。
そんな悠真も震えていた。
「ヤバいね。
屠殺場に行く前の豚の気分だ」
「分かる。俺、泣きそう」
大輝は顔色が悪くて。
何度も何度もベースをチェックしている。
あたしだって余裕ない。
正直、逃げられるものなら逃げたい。
でも……賢ちゃんの存在があたしを強くする。
あたしは、十分練習した。
あとは楽しむだけ!
「いくぞ!」
悠真の声で円陣を組み、手を取り合う。
そして、あたしはステージへと駆け出した。