俺と結婚しろよ!
賢ちゃんの店の料理は、とてもとても美味しかった。
当然だ。
だって、賢ちゃんの料理も、ほっぺたが落ちるほど美味しいから。
「美味しい」
そう言って料理を食べるあたし。
思わず顔がほころぶあたしを、嬉しそうに賢ちゃんは見ていた。
賢ちゃんの店は、しっかりとしたフランス料理店。
だけど、思っているほど敷居も高くない。
少しだけお洒落をして、デートで来るような店にぴったりだ。
「俺の親父が洋食店経営しててさ……って咲良、知ってるよな」
あたしは頷く。
少しさびれた、大衆食堂のような店だった。
でも、料理はとても美味しいと評判だったらしい。
あまり覚えていないけど。
でも、ぼんやりと覚えている。