俺と結婚しろよ!
エレベーターは上層階に着き、扉が開く。
目の前には、宝石のような東京の夜景。
下では報道陣がまだガヤガヤしていたが、あたしたちはもう、世間の喧騒とは縁のない世界に来ている。
賢ちゃんは立派な部屋の扉を開け、あたしの背中に手を当てたまま、あたしを中に招き入れる。
久しぶりに入る、賢ちゃんの部屋。
いつもと同じ、賢ちゃんの部屋。
それなのに、胸がいつも以上にざわついている。
「俺を好きになれ」
「え?」
「他の男なんて見えねぇほど、俺を好きになれ」
「賢ちゃんの馬鹿」
思わず言っていた。