私、先生と付き合ってます。
そんな私たちを相田主将達に見られていたのを私は知らない。

モールの中は思ったより、人が多い…。

これは確かに手を繋いでいないとはぐれそうレベルだ。

私の弱点は…かなりの方向音痴なこと…。

先生に引っ張られ、ついていくので精一杯。

なのに、相田主将とマネージャーは楽しそう…。

悔しい…。勉強もスポーツもそれなりの私が!!

何で方向音痴なのよ…

ふと、先生が私の方を見た。

「大丈夫か?」って。どうやら分かりやすく険しい顔をしてたらしい。

そんな様子を見て、相田主将とマネージャーも来てくれた。

「これじゃ、せっかくのショッピングも楽しくないよね~」と言いながらも笑ってるマネージャー。

「少し休もう…」と相田主将は言って、少し人の少ない、椅子の方へと私を導いた。

「人に酔ったのか?」と心配そうに覗き込んでくる先生。

そんなことはない。私は人酔いなどしたことない…。

ただ方向音痴に苦しめられているのだ。

けど。先生に心配かけてるのは心苦しい。

だからと言って、私の弱点を見抜かれるのは恥ずかしい。

私にだってプライドがある。

勉強では力を発揮するし、社会の授業だってけして苦手なわけではない。地図だって読める。

けど。方角が理解出来ない。

景色を記憶する能力が著しく低いのだ。

だからこうして大きいところに来ると、必ず迷子になる。

この際、先生に甘えてみようか?

この事を上手く利用して。

そんなことを考えていたとき、みんなが私に声をかけた。

「ホントに大丈夫?!なんか段々顔色悪くなってる気がするけど…」とマネージャーが言い出したのだ。

嘘…?!

「大丈夫です」と笑ってみた。

けど…ひきつっているのが自分でもわかる。

「ムリして笑わなくて良いよ…」と先生まで言い出した。

「ちょっとこい…」と相田主将は言って、私の腕をつかんで、先生とマネージャーを置いてきぼりにして私を連れ出した。

とある場所の1角で、私は問い詰められた。

言わざる得なくて、相田主将には打ち明けた。

「そっか、そっちな。もっと早く言えよな」と頭を優しく撫でられた。

しばらくし、私が落ち着いたので、私たちは先生のところに戻った。

「顔色良くなったね~」と先生は言ってくれた。

「…ゴメンね。私がはしゃぎ過ぎてるから…」とマネージャーは謝ってくれた。

マネージャーのせいじゃない。

私が悪いのに…複雑な気持ちになった。

「さて、そろそろショッピング再開しようか」と相田主将は言った。

俺だって楽しみたいのだと言わんばかりに私に向けるウィンクに私は頷いた。

今度は私から先生に「私の手離さないで下さい」と言って、先生の手に自分の手を重ねた。

先生は嬉しそうに笑った。

それから私達は楽しく過ごした。

先生も学生時代を思い出すとか言って、楽しんでいるみたいだった。
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