とある犯罪者たちの雑談
驚くほど冷静だったボクは、すぐさま警察に通報しました。
いやいや、すごくなんかないです。
男たちが不慣れだったおかげですよ。
そんな風にすっかり怯えてしまった彼女を見かねた友人が、彼女を庇うように前に立ったんです。
あの瞬間、ボクがどれほどほっとしたことか!
友人のせいで彼女と帰ることができなかったこともなにもかも、ボクは許したいと思いましたとも。
でもね、ふたりは焦っていたのか、お金を出していなかったのです。
早く用を済ませてしまいたい強盗犯としては苛立ちが募ることでしょう。
ひとりが友人を切りつけました。
本気でふたりは、あんな野蛮なものを向ける気でいるのだと知りました。
ボクの彼女を傷つける気なのだと、気づきました。
早くしろと彼女にもうひとりの男が叫んだ瞬間、ボクはその男に向かって行きました。
恐ろしくはなかったのかって?
ボクの大切な彼女が危ないのに、こんなこと気にかかるわけありません。
必死ですよ、必死。
それでボクは酒瓶を振りかぶって、頭に叩き落としました。
何度も何度も殴りかかり、起き上がることがなくても酒瓶を男におろし続けました。
もちろん、彼女を傷つけないためにしたことですが、きっと破片くらいは飛んでしまったでしょうね。
大きな怪我はなかったと聞いていますが、ああ、ボクがもっとうまくやれていたなら……。
ああ、すみません。
今さら振り返っても仕方がないですよね。