ほら、そうやってすぐ死ぬ。
戸倉さんは私が通帳を盗むかもしれないと頭によぎっていて、それを言い出せなかったのだと思う。
ならいいじゃないか。盗んだって。
私が通帳を盗むかもしれないって思ってたってことは、戸倉さんの中では私が通帳を盗んで当然の結果なわけだ。
ならその通りに、その頭によぎったシナリオ通りにことを運んであげようではないか。
ここには長居しすぎた。
そろそろ出てもいい頃だろう。
私はここで働いた。
戸倉さんの部屋を掃除し、洗濯をし、料理を作った。
その退職金がこの600万円近くの通帳だ。
悪く思わないでね、戸倉さん。
でも、あなたがいけないのよ。
簡単に人を信用したりするから。