ほら、そうやってすぐ死ぬ。
コンビニへ着いた私はそのままATMコーナーへ向かった。
そこで通帳を通そうとしたが、通せなかった。
通帳を通す場所がない。
カードをいれてくださいと表示されている。
カード。ああ、そうか。
カードは戸倉さんが持っている。
彼女は旅先でもお金が下ろせる状態なのだ。
つまり、私が万が一引き出せたとしても、戸倉さんが残高照会をすれば、一発で犯人が私だと断定することが出来る。
それに、ATMで600万円下ろせるわけがない。
1日に下ろせる限度額は50万円。これだと12日もかかってしまう。
ちょっと考えたらわかるはずなのに、私としたことがお金に目がくらんで、周りが見えなくなっていた。
猪。猪だ。
「いい雨の日だ。」
成人向け雑誌コーナーで立ち読みをしている男が私にそう声をかけてきた。
声の主を見て私は思った。
まだ『お金』に目がくらんでいるのだろうかと。