ほら、そうやってすぐ死ぬ。



コンビニへ着いた私はそのままATMコーナーへ向かった。

そこで通帳を通そうとしたが、通せなかった。

通帳を通す場所がない。

カードをいれてくださいと表示されている。

カード。ああ、そうか。

カードは戸倉さんが持っている。

彼女は旅先でもお金が下ろせる状態なのだ。

つまり、私が万が一引き出せたとしても、戸倉さんが残高照会をすれば、一発で犯人が私だと断定することが出来る。

それに、ATMで600万円下ろせるわけがない。

1日に下ろせる限度額は50万円。これだと12日もかかってしまう。

ちょっと考えたらわかるはずなのに、私としたことがお金に目がくらんで、周りが見えなくなっていた。

猪。猪だ。

「いい雨の日だ。」

成人向け雑誌コーナーで立ち読みをしている男が私にそう声をかけてきた。

声の主を見て私は思った。

まだ『お金』に目がくらんでいるのだろうかと。


< 110 / 219 >

この作品をシェア

pagetop