ほら、そうやってすぐ死ぬ。



「な、なんで……。」

「誰だって見てればわかるわよ。それで、あんたのことが好きだった優香は櫻子に嫉妬してて、それで2人の仲が悪くなった。優香なんて、あんたの弔辞の最中、ずっとセーターの毛玉取ってたし。」

そう。金子は櫻子が好きだった。そして、優香は金子が好きだった。ただ、櫻子は金子のことは好きじゃないし、優香のことは可哀想な子という認識。

つまり、3人はいわゆる三角関係というやつで、私はそのトライアングルの真ん中に位置していたようなものだ。

でも2人の死によってそれは崩壊。本当に有難かった。

ただ、崩壊しただけで、消滅はしていない。

金子の心の中には今も好きな人を殺してしまった強い後悔と深い悲しみが渦巻いている。

それを断ち切るために、2人の殺しの依頼人を私が殺してと金子に依頼する。

人殺しの慈善事業のようなものだ。

「それじゃ喫茶店にでも入って打ち合わせしよっか。」

私は金子の手を引いてコンビニを出た。雨はすっかり上がっていて、ムートンブーツで踏んだ水溜りが勢いよく跳ね、私たちの膝をいやらしく濡らした。

いや、違うな。

私は楽しんでいる。

初めてお金を使ってハンバーガーを買った時のように、お金を払って人が死ぬというシステムを体験したがっている。

人の命は重いなんて道徳の授業は所詮、その場だけのノリで、数年経つと私のようなモンスターは簡単に目覚める。

それも微笑んで。


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