ほら、そうやってすぐ死ぬ。



それから金子のコートと紐のついたTシャツとジーパンを洗濯機にぶち込んで、スイッチを押した。

洗剤をプラスティックの計量スプーンですくったところで、今洗濯しても乾燥機がないから乾かないということに気づいた。

洗濯機の蓋を開けると、ああ、もうビショビショに濡れてて手遅れ。

部屋干しになるけれど、暖房を入れたりすれば乾くだろう。私は洗剤をサラサラとかけて蓋をした。

洗濯機が大きな音を立てて回り始める。その音を聞きながら、戸倉さんの通帳を元の場所にしまい込み、リビングで横になった。

洗濯機の音と混ざって、金子がシャワーを浴びる音が聞こえてくる。

金子が今、私がいつも裸になる場所で同じように裸になって身体を洗っている。

浴室を貸したのだから当然だけど、その当然が違和感となって、私に語りかけてくる。

語り口が村上春樹の小説のように、物を何かに喩えて独創的な描写となって耳に入り、頭の中で映像化される。

悪の文字に水滴が付いて、泣いているように見える。

そこからすすーっと視線を下に落とすと、ああダメっ。

でも、興味がある。


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