ほら、そうやってすぐ死ぬ。



お父さんは働かないで、家でゴロゴロして、新聞を読みながらラジオの前でお酒を飲むのが普通。

そして、お酒がなくなると壁に一升瓶を投げつける。

ガラガッシャーン!

音を立てて割れた瓶の破片。緑とか青とか白とかが混ざって、綺麗。

ガラガッシャーン!

でも、危ない。

その破片を踏まないように注意して歩かなければならない。

万一、踏んだりなんかすると、足の裏をぱっくりと切ってしまって痛い。

血が滲んで、ああ、でも生きてる。

ガラガッシャーン!

瓶はどこからともなく飛んでくる。

ゴツン!

鈍い音が響いて、額から血が流れてきて、ああ、生きてる。

赤く染まった視線の先、あの凍るような、刺さるような、笑顔。

その笑顔を私に振りまいて、近づいて、

「痛かったよなあ? ごめんな?」

そう言ってごつくて大きな左手で頭を撫でてくれて、髪の毛に触れて、頬を強く強く握ってくれて、

バチン!

叩いてくれる。

痛いけど、

「これが生きているっていうことだよ。」

って言ってたから。

ああ、生きてるんだ。

バチン!

ああ、私は生きている。



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