ほら、そうやってすぐ死ぬ。



母さんは何も言わない。

お昼に家に帰ってくると、ピラフを作ってくれる。

コショウがピリッと利いた美味しいピラフ。

私が苦手な味。お父さんの大好きな味。

私は箸でご飯をつまんで食べる。

口へ運ぶと、コショウが染みて、痛い。

鉄の味。でもこれが生きてるってこと。

箸からご飯が落ちた。

左手で取ろうとすると、私の左手の上にスプーンが振り下ろされる。

ベチン!

「お前。俺を馬鹿にしてんだろ?」

馬鹿になんかしてない。

馬鹿って何? ねえ、何?

馬鹿ってなんですか。

ごめんなさい。ごめんなさい。

謝る。

でも、許されない。

石のように硬い左手の拳が、スプーンを握って、更に強く飛んでくる。

壁にドンっと背中を打ちつけ、左手に激痛が走る。

見ると、緑とか青とか白とかの破片に血が混ざって、綺麗。



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