ほら、そうやってすぐ死ぬ。
シャワーの音が止まった。
金子が蛇口を締めたようだった。
そして、私はここで初めて気づいた。
金子が泣いていたことに。
「救われたいのは俺のほうだよ。」
泣き腫らした顔で、泣きじゃくった後の枯れた声で言った。
「俺は人をたくさん殺してきた。仕事とはいえ、大勢の人を。私怨もなければ、名前も知らない。殺されて当然の者もいれば、依頼人の都合で殺される新婚の男までいた。人の命は平等か? 天は人の上に人を造らず。人の下に人を造らずってなんだよ? 俺は人を殺してももう何の感情も起きない。起きないけれど、これは間違っているんだよな? 不条理なんだよな? サイコパスなんだよな? こんな人間になっちまった俺は、一体何に縋ればいい? 何に懺悔したらこの罪が償われるんだ?」
金子の魂の叫びが私の両腕に振動となって伝わってくる。低い、枯れた声が振動する。私の血管を通って、心に響く。
金子の魂の叫び。
「じゃあ、なんでそんな仕事してるの?」
「……俺は俺自身を殺したがってる。」
私にはなぜか金子の言っている言葉の意味が理解できた。
だから言えた。言葉を投げかけることが、救いの手を差し伸べることができた。