ほら、そうやってすぐ死ぬ。
それから私たちはお互いに何となく過ごした。
とりあえず、テレビをつけておけば沈黙になってもどうってことない。テレビをつけて、あとは雑誌でもめくっていれば雨の日の休日の過ごし方っぽくはなる。
金子はソファーに背中を預け、テレビを熱心に観ていた。クリスマスのスイーツ特集をやっていて、元気を無理矢理作ったような初々しい女リポーターが着色料で色付けされたような、赤いムースで固められたケーキをプラスチック製の小さなフォークで、うわ、欲張り。口の入らないほど大きく切って、口の周りのクリームをつけて天然を装っている。
「くだらない。」私は吐き捨てるように言った。
「くだらないな、確かに。」金子もそう言って欠伸をした。
「ケーキ食べて、『美味しい』だとか『口の中でとろけて』とか言っておけば翌月にはお金が入るなんて、ちょろい仕事よね。金子。あんた、櫻子と優香殺していくらもらったの?」
「櫻子は200。優香は150。」
「万?」
「円だと思うか?」
「思わない。」私は赤ワインを取り出した。ファーニエンテだ。そして、冷蔵庫に行き、ブルーチーズを取り出し、ワイングラスを二つ、テーブルに置いた。
「でも、よくよく考えたら、殺しの値段って、その人の命と同等。またはそれ以下ってことよね。等価交換じゃない? この世の中。櫻子の命をお金で換算すると、Kにとっては200万弱の価値しかなかったってことよね。」
「200万弱何て言わなくても、ぴったり200万って言えばいいだろ?」
「弱にしたのは、手数料よ。」ワイングラスにファーニエンテを注いだ。
「飲む?」
「いやいい。」
「まさかびびってるの?」
「そうじゃない。ワイン嫌いなんだ。」
そう言って、金子はブルーチーズを一口食べた。