ほら、そうやってすぐ死ぬ。
夜になり、雨も止んだ。
私たちは電車に乗り、新宿2丁目にあるKのアジトである雑居ビルへ赴いた。
「いいか? 平常心な。」
金子の目つきが変わった。冷めたような目で、これが闇の世界で生きるということなのだろうか。
私は頷き、金子に続いてバーへ入った。
バーの中は派手。ガールズバーで、厚化粧で、縦巻きロール、ロイヤルチーパーで揃えたであろうドレス。ひと昔のガールズバーよりは多少、趣味はいいように見えた。
テーブルに通され、それから二人の女性が付いた。犬歯の長い口元がだらしない女とおもちゃのリコーダーのようにチープで酒焼けした出来損ないのような声の女。
「おかえりなさいませ。何か呑まれますかー?」
おかえり? いやいや初めてだって。何言ってんの、こいつ。頭湧いてんの?
金子はマティーニを注文した。私はソルティドッグを注文した。もちろん、二人とも未成年だけど、そんなもの軽犯罪でしかない。私たちは殺人と殺人ほう助を犯しているのだ。今更罪の意識もクソもない。
マティーニとソルティドッグが運ばれて、乾杯。それから「金子くんってB型だよねえ?」とか、「紗栄子ちゃんは絶対金子くんみたいな男の子と付き合うべきだよ。」とか、初対面のババアが何言ってんだ? はあ? とまあ、まずい酒を呑んだ。
金子が口を開いた。
「お姉さんたち、『なでっこなでしこ』って知ってますか?」
女たちの顔が一瞬だが、曇った。