ほら、そうやってすぐ死ぬ。



「お客さん。どうしました?」

奥からマイク・タイソンを彷彿させる体型で、サングラスをかけた長淵世代の男が肩で風を切りながら歩いてくる。

「あらららら。困りますねえ、お客さん。暴力は。」

タイソンは金子の肩を片手で掴んだ。金子はボーイを解放すると、タイソンは「奥で話しましょうや。」と言って、私と金子を奥のVIPルームへ案内した。

それはもう丁重な扱いであった。

通されると、ソファーに座らされ、タイソンが対面に座った。

「キミら、高校生だろ?」

私も金子も黙った。

「いやあ、いいんだ。別に俺は。まあ、なんだ。俺も昔はその、やんちゃしたからねえ。」

そう言って、タイソンはスーツのジャケットを脱ぎ、黒シャツを腕まくりし、その太い腕に刻まれた、まっすぐに伸びたミミズのような傷を見せた。

「高校の時だったか、近所にあったヤクザの事務所にエアガンぶっ放したことがあってな。その時の落とし前に自分で切ったんだよ。」

「指を切るんじゃないんですか?」

思わず聞いてしまった。

「最古だな。まあ落とし前の付け方としてはぴったりだよなあ。でも、俺は怖くて泣いて頼んだ。勘弁してくれってな。その妥協案がこれさ。」

「弱虫の象徴ってわけね。」

タイソンは笑った。



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