ほら、そうやってすぐ死ぬ。
それからタイソンはテーブルに置かれた葉巻を一本手に取り、ビールの栓抜きのようなもので葉巻の先を少し切った。それから隣で立っていた眼鏡のオールバックの男に火をつけさせ、煙を吐いた。
「これが何か知ってるか?」
私も金子も黙った。
「シガーカッター。ギロチンだよ。葉巻の吸い口を切るのに使う。」
そう言って、シガーカッターをカチカチと鳴らすタイソン。
まさか。
こいつがKなのだろうか。
K。確かにこの店ではこいつが一番偉いような感じはする。それにこの寛大さと狂気を持ち合わせたような余裕。どっしりと構えている。
まるで、今までに何人もの人を殺してきたような余裕。
「キミらの目的については、さっきの騒動でよくわかった。しかし高校生とはいえ、礼儀を知らないのはまずいねえ。頼み事がある時はどうするかお母さんに教わらなかったのかい?」
「お母さんはいません。死んだんで。」私は得意げにそう答えた。
「三田美沙子だっけか? 近くの雑居ビル火災で死んだ。」
私は思わず立ち上がった。
「なぜ? そう思っただろ?」
タイソンがにやりと笑った。
「金城守は、うちの構成員の一人だ。」