ほら、そうやってすぐ死ぬ。
金城が構成員?
あの金城が……私は身震いがした。なるほど。タイソンはすべてを知っているわけだ。
「あの雑居ビルの土地はうちの会社のもんだ。それを三田……キミのお母さんに貸してた。しかしねえ、ただで貸すわけがないだろう? 家賃を払います。そういう約束で貸したんだ。その約束をキミのお母さんは破った。嘘つきは泥棒の始まりなんて言うけれど、まさにその通り。キミのお母さんは俺たちを騙して、家賃を払わずにあのテナントを泥棒したのよ。だから金城に消させた。保険金かけてね。その保険金で滞納分をチャラにした……いや、するはずだった。」
タイソンは立ち上がり、私の肩に手を振れた。
「しかしねえ、キミ。キミだよ。キミなんだよ。キミのせいだ。キミが金城を騙して400万受け取ったばかりに、2000万が1600万になっちまった。滞納分に届いてないんだよ。金城の奴もそれを勝手に承諾しやがった。馬鹿な野郎さ。」
「金城は今どこにいるの?」
私の問いにタイソンは傍に立っている眼鏡に「おい。」と首で合図した。眼鏡はすぐさま地図を持ってきた。タイソンは葉巻で焼き印をつけた。
「ここだよ。」
ああ、ここって東京湾。わーお。
「当然の報いだ。そして、キミにも事情を知らないとはいえ、うちの構成員を脅したんだからなあ。それくらいの落とし前はつけてもらいたいわけよ。」
「落とし前?」私は鼻で笑った。
「ビビッてろくに落とし前をつけられなかったあなたが随分なことを言うわね。」
本当は怖くて怖くてたまらなかった。でも、それを悟られるほうがよっぽど怖くて、強がった。タイソンの手はまだ私の肩の上にある。
「そうだとも。俺は弱虫だ。しかしねえ、キミ。そんな俺を弱虫呼ばわりするなんていい度胸じゃないの。キミはさぞ、綺麗に落とし前をつけられると見た。」
はめられた。そう思った。
タイソンは私の肩から手を下ろし、テーブルに置かれたシガーカッターを私の前に滑らせた。
「本当は3本のところ、度胸と幼さに免じて1本にしてやる。」