ほら、そうやってすぐ死ぬ。
「じゃあ、どこにいるの?」
「答える義理はない。」
タイソンの言うことは尤もだったが、私たちには切り札がある。
「俺はあんたらのボスの愛人を二人殺すように命じられた殺し屋だ。いわばあんたらのボスは俺の依頼人なわけだ。その依頼人が殺し屋に隠し事なんか許されると思うか?」
「それもそうだな。」
タイソンはまた葉巻に火をつけた。
「それもそうだ。しかしそれについても事実と違うところがある。依頼人は確かにKだが、実際にその場に赴いたのはKではない。」
「どういうことだ?」金子は身を乗り出して訊いた。
「俺だよ。Kの意思を汲んで俺がキミにそれを伝えたまで。」
金子はソファーに深くもたれた。まるで、今目の前で銃口を突きつけられ、額に一発風穴を開けられたようなそんな感じに似ていた。
「つまり、金子が声でやり取りしていたのはKじゃなくて、タイソンだったってことでしょ?」
「タイソン?」タイソンが噴き出した。
「タイソンってマイク・タイソンだろう? ははん。俺をそんな目で見ていたか……。」
「しょうがないでしょ。あんたの名前知らないんだから。」
「タイソンでいいよ。嫌いじゃないし。」