ほら、そうやってすぐ死ぬ。
小指の痛みは一週間経っても消えることはなかった。
なんと、あのタイソンが新宿2丁目の路地裏のゴミ置き場で変死体となって発見されたのだった。
このニュースは連日報道され、タイソンの太々しい顔写真が映し出されるたびに小指の傷が疼いた。
驚くことに、その犯人というのがなんとあの時、金子が手を踏んだボーイだと言う。そのボーイも逮捕直前に、首を吊って自殺。遺書には両親への謝罪と犯行の動機や経緯について書かれていたのだと言う。
これで事件は事実上、解決する運びとなった。しかし、金子は納得していないようだった。
「あれはきっと何か裏があるに違いない。」
学校の昼休み、金子に呼び出された、屋上へと続く階段の踊り場にある、机や椅子が積み重なってバリケードになっているスペースでそう言った。
「裏がある?」
「裏がある。」金子は繰り返す。
「裏があるんだよ。タイソンが殺されたタイミング、そしてその相手。」
「ボーイだっけ? ほら、あんたが手を踏んだ。」
「そう。この二人に共通点があるとすれば、何だと思う?」
共通点? 共通点といえば、二人とも冴えない男だということと、バーの従業員。しかし、そんなことでは納得しないだろう、金子は。
「この二人が唯一、俺たちと接触してるんだよ。」
ああ、なるほど。