ほら、そうやってすぐ死ぬ。
大通りの信号待ちを避け、歩道橋を渡ることにした。
刺客がいた場合、目立つが、それでいい。刺客はなかなか手を出せないだろうし、後をつけることも難しいだろうという考えからだ。
我ながら頭が冴えまくっている。
歩道橋を半分まで渡ったところで、スマホが鳴った。金子からだ。
「おお、お前、今どこにいんの?」
「新町の歩道橋だけど。」そう答えた。
「よし、それじゃあそのまま聞いてくれ。」
「そのまま?」私は狼狽えた。
「何かあったの?」
「何もないのに俺がお前に電話すると思うか?」
「思わない。」続けた。
「でも、何もないのに電話してくれる方が実際嬉しい。」
「はあ? 何言ってんだ?」金子は鈍感だった。
「お前さ、何もないのに電話されて、それで嬉しいのって好きな奴からぐらいだぞ?」とことん鈍感だった。
「それで、何の用?」
私は半ばイライラしながら訊いた。