ほら、そうやってすぐ死ぬ。



私はサバイバルナイフをディッキーズのリュックから取り、後ろ手に隠して戸倉さんの隣に座った。

戸倉さんは私を見て、「あれ? 前髪伸びたんじゃない?」と言っていじってくる。その手つきは優しく、丁寧に撫でてくれる。でも、彼女は同性愛者だ。女なのに女が好きで、櫻子を失った後釜として今まで私を性的な目で見ていたのだ。

親切心だと思っていたのに。裏切られた!

でもまあ、人生ってそんなもんよね。

信じて、裏切られる。結局誰しも自分が可愛いのだ。

私は小学校で唯一の友達を見捨てた。

「そんなこともできない人とおともだちなんて恥ずかしい。」

そう言い放って逃げた。

彼女はその日以来学校に来なくなった。今生きているかすらもわからない。

戸倉さんも同じだ。

「紗栄子ってほんと可愛いよねー。」

そう言いながら結局自分が一番可愛いと思っているのだ、メス豚め!

「紗栄子。」

「何ですか?」


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