ほら、そうやってすぐ死ぬ。



私はある夜、自宅マンションの三階の自分の部屋から飛び降りた。

月が半月より少しかけていて、そら豆のような形をしていた、そんな夜だった。

死ぬことは怖くない。

櫻子も優香も死んだんだ。

私も流行に乗り遅れないようにしなければ。

川を渡ろう。

ボートに乗って、ゆっくり、ゆっくり。

この先は知らない。

どんな景色が待っているんだろう。

静かに目を閉じた。

次に見るであろうこの世界のものではない景色を心待ちにして。


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