ほら、そうやってすぐ死ぬ。
彼はバイオリンケースを抱えたまま首をかしげ、「うーん」と唸った。
メガネをかけていて、更にコーヒーカップでも持っていたら、きっと文学男子に見える。
「ダメ。採血あるから。」
軽く振られてしまった。
わ、私は採血に負ける女なのね!!
なんて嘆いてもいられない。これでいいのだ。
恋というのは双方からじゃなくて、一方通行がいい。
そっちの方がよりドキドキするし、ロマンチックだ。
告白されて、意識して、好きになる。なんてまどろっこしいことは嫌い。
私だけを見て! 私に溺れて! 私はあなたになら何をされてもいい。何をあげてもいいの。だからあなたは私だけをずっと見ていなさい! 私を使って欲求を満たすの。そうすることで、私も満たされる。
「まあでも、14階なら会うこともあるよ。きっと。」
「で、ですよねー。」
「名前は?」
「三田紗栄子。」
「ボクは佐野快斗。」