ほら、そうやってすぐ死ぬ。
ステージ4の人



入院生活はそれなりに充実していたように思う。

ただ、飛び降りた時のショックからなのか、後遺症からなのか、食欲がほとんどなかった。

程なくして、点滴をする事になり、ドーナツの余りは日替わりのナース達で片付けてくれた。

点滴の一滴、一滴が落ちる音を聴こうと耳を傾けても聞こえない。

点滴は静かに落ちていく。まるで時の流れに抗うかのように。ゆっくり、ゆっくりと。

この落ちた瞬間に、その一滴分の栄養が私の血管に入り込んでいく。

血管に入って、それからこの一滴達がどれほどの偉業を成し遂げるのかは知らないし、知りたくもない。


< 51 / 219 >

この作品をシェア

pagetop