ほら、そうやってすぐ死ぬ。



私がキョトンとしているのを察したのか、佐野くんは「ああ、ごめんね。」とまたさっきの笑顔を作る。

「ボクねー、そう長くないんだよ。」

さっきのあの笑顔でそんなことをサラッと言いのけた。

「長くない? どういう……。」

「脳に腫瘍があったんだ。悪性のね。」

腫瘍……つまり、がん?

「で、でも、手術で治るでしょ! ほら、よく有名人もがんから復帰してるし。」

「それは早期発見の運のいいケースだよ。ボクのはステージ4。」

ステージ4。つまり、末期だ。

「いつまで?」

私はこんな時にも関わらずデリカシーのないことを聞く。

「医者は1ヶ月って言ってたかな。早いよね、1ヶ月。」

余命1ヶ月……。ドラマの世界なんかじゃないんだ。実際にそういう人を目の当たりにしてしまっては。

何だろう……。


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