ほら、そうやってすぐ死ぬ。



しかも、何が一番興奮するって、それは死ぬのが惚れた人だから。

惚れた人、佐野くんが死ぬ。私はその悲しみにしばらく浸り、周りから同情される。

そして、佐野くんの死を一生背負っていく。

バーで一人、トム・コリンズなんかを飲んでいると、40代くらいのいい感じに禿げたおじさんが話しかけてくる。

私は愛想笑いで軽くあしらう。

それでもめげずにアタックしてくる禿げオヤジに向かってしみじみと語るのだ。

「私、数年前に大事な人を亡くしてるんです。」と。

何だかそういう重いものを背負って、何でもないような顔で生きてる女性ってかっこいい。

憧れる。

その憧れに私もなれるかもしれないのだ!


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