ほら、そうやってすぐ死ぬ。



私は佐野くんとキスをした。

暗く、寒く、寂しい霊安室で。

でも、そのどれにも当てはまらない一瞬の霊安室は、明るく、暖かくて、居心地が良い。

そこへさっきの女性が戻ってきた。

「な、何なんですか、あなた達は!」

「やべっ! 紗栄子、逃げるぞ?」

佐野くんに手を引かれ、霊安室を騒がしく、笑顔で走り去った。

本来、死への悲しみで出て行く場所を。

私達は明るい光が先に待っているかのように、前向きに飛び出した。

罰当たりな罪だけど、きっと少年法が守ってくれる。


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