ほら、そうやってすぐ死ぬ。



「紗栄子ちゃんがボクをお父さんだと思えない気持ちはよくわかる。だから、ボクのことはこの先ずっと、金城でもいい。何ならおじさんでもいい。でも、ボクはキミに父親から娘に注ぐ愛情で接したい。キミを本当の娘のように可愛がりたい。」

隣のベッドの人にも聞こえるほど大きな声で恥ずかしいことを宣言してくれるじゃないの。

必死だな。

「金城。場所変えよう。」

私は金城の分厚い手を引いて病室を出て、佐野くんと初めて会った中庭に連れ出した。

「いい? 金城。私、別にあんた達が結婚しようがしまいがかまわないの。私は私だし、金城は金城。私の何者でもない、ただの金城よ。」

金城はベンチに座って、私を見上げる形でうんうんと頷きながら聞いている。

忠実。いいだろう。


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