好きって、伝えたら



夕空には両親がいないから…


ずっと、ずっと一人なわけで。



『いや、さすがに帰さなきゃ…』


「うぅん、せめて熱が下がるまでは…
だから、今はゆっくり休んで?」


『…』



夕空を寝かし、布団を掛ける…



「何か買ってこようか?」


『…いい。だから、側に居てよ…』



力なき声…



「うん…でも、タオル水に濡らしてくるから」


『ありがと』



アタシの額に乗せてくれていたタオルを持って、洗面台に向かう。


その途中、キッチンが見えてドアを開けるとカップラーメンが無造作に置かれていて…


夕空…


静かにドアを閉めて洗面台に行く…


夕空はずっと美湖ちゃんの心配してたんだもんね。


そんなことを思い、1本しかない歯ブラシをみつめて洗面台を後にして部屋に戻る…



夕空を見てある言葉を思い出した…

『家族を大切にしろよ』って、前に言われた。


いったい、夕空の両親はどこにいるのだろう。


夕空が苦しい時、辛い時、しんどい時、一番側にいて欲しいと思う。


でも、夕空は…



そう考えた時、涙が零れ落ちた…


バカだな…



夕空の前に座ると、次々涙が溢れ出る。



『なんで泣いて…』


「夕空はずっと一人だったんだって、改めて気付いて…それに一番側にいて欲しいのは両親じゃないかって…」


『バカ。
俺はお前さえ居てくれればいいんだよ』



そう言って夕空はアタシの涙を拭ってくれた…






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