フィンセはナンバー1
嬉しそうな顔で言った。

「社長さんは、良い人だったけど、婚約だなんて認めたわけじゃないんだからね!」

 あたしは、ムスッとした顔で言う。


「まあまあ。今すぐって、わけじゃないんだし」

 お父さんは、笑いながらそう言った。




 それから、一週間、経ってからのことだったー。

「琴音。悪いんだけど、三浦さんの家に届け物頼まれてくれる?」


 お母さんが、紙袋を、あたしの前に置いた。

「何で、あたしが……」

 あたしは、ぶつぶつ文句を言う。

「お父さんに頼まれていたの、忘れていたのよー。文句言わずに、お願いね」

 お母さんに急かされて、仕方なく、届けることにー。



「はあー」

 目的地に着いたものの、豪邸を目の前にすると、緊張してインターホンを鳴らす勇気が出ないでいた。


 門の前でうろうろしていると、帽子をかぶり、メガネをかけた男の子が近づいてきた。

 怪しい人だって思われたかなー?

「あの……。あたし、怪しいとかじゃなくて、ここの家に用があってー」

 あたしは、慌てて説明した。

 でも、ちょっと待って……。この人、何処かで見たことがあるようなー。


 男の子は、あたし
< 5 / 140 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop