フィンセはナンバー1

 りく君が、ボソッと呟いた。

「ち、ちんちくりんって、あたしのこと!?」

「あんたの他に、誰がいるんだよ?」

 りく君は、うっすらと笑みを浮かべた。


「……!!」


 今までのりく君のイメージが崩れ落ちた。


「とにかく、あんたが婚約者だなんて、俺は絶対に認めないから」


 りく君は、あたしの耳元で囁いた。

「べ……別に、あたしだって、りく君がフィンセだなんて、こっちからお断りよ!」

 あたしは、ムスッとした顔でりく君から、目を逸らした。





「今日は、席替えするぞー」

 翌日、学校へ行くと、担任の北条先生が、クラスのみんなに声をかけた。

 廊下側から独りずつ、くじを引いていく。

 あたしの番になって、くじを引くと窓際の一番後ろの席だった。

「昨日は、最悪だったから、今日はラッキー」

 あたしは、ガッツポーズを決めた。

「そんなに昨日、最悪だったんだ?」

「そうなの!りく君が……」

 と、言いかけた時、ハッと隣の席へ目をやった。


 隣の席には、クラスでも結構人気の男の子、南直也君が座っていた。


 南君とは、挨拶程度で、あまり話したことがない。
< 8 / 140 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop