甘いささやきは社長室で



「あの、桐生社長の住所聞いてもいいですか?」

「え?」

「……休憩時間にお見舞い、行こうと思って」



別に余計な気持ちはない。顔を見せてやるって、それだけの気持ち。

照れを隠すようにそう言う私に、心の内をどことなく理解しているのか、三木さんは小さく笑って頷く。



「じゃあせっかくなら少し早めにあがって、食事や薬持って行ってもらってもいいですか?ちょうど『家になにもないから持ってきて』って、社長からも頼まれてたんです」

「わかりました」



そんな私に三木さんはスーツのポケットから取り出した手帳にすらすらと住所を書き、ついでにマンションのロックナンバーまで教えてくれた。



家になにもないって……大丈夫なんだろうか。まぁ、あの人らしいといえばらしいけれど。

いろいろ買って、持って行ってあげるか。そう決めて、とりあえずは桐生社長がいない分の仕事を頑張らねばと仕事へ取り組んだ。






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