甘いささやきは社長室で
「……はぁ、」
こぼしたのは、呆れたような小さなため息。
「いい加減にしてください。バカなことばかり、言わないで。最初に言ったはずです。あなたみたいな最低な男は嫌いだと」
「嫌いな男に、何度も抱きしめられてキスされてたの?……少なくとも僕には、マユちゃんも似た心を持ってくれてるように感じられていたんだけど」
問いかけるその表情に、いつものような笑みはない。余計な感情は一切取り払って、真っ直ぐに向かい合ってくる。
それに対し、私も余計な感情は見せずに向かい合う。
「自惚れないでください。あなたは社長で私は秘書、それだけで絶対的な関係は生まれているんです」
冷たく、突き放すように言うのは、ただの事実。
「あなたが社長だから、逆らえないからキスをしただけ。他のことも全て、あなたが社長じゃなければ従わなかったこと」