甘いささやきは社長室で



「はい、桐生です」

『あ……おはようございます、花音です』

「おはよう、花音。どうしたの?めずらしいね、電話なんて」



いつもは要件はメールで伝えることが多い花音からの電話に問いかけると、「えぇ、たまには」とか細くかわいらしい声が返ってくる。



『祐輔さん、今夜お時間はありますか?よろしければ、ごはんとか……どうですか?』

「食事?うん、いいよ。どこか行きたいところとかはある?」



うなずきながら、電話の向こうでは花音がぱあっと表情を明るくするのが想像つく。



『いえ、いつもように祐輔さんにお任せします』

「わかった。じゃあ、19時半にそっちまで迎えに行くから」



そう言って電話を切ると、表示されたホーム画面。

その日付から、彼女からしっかりと線を引かれたあの日から一週間が経っていることに気づいた。



……気まずいのも1週間目、だ。





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