甘いささやきは社長室で
「けど余程必死に来たんですね。汗かいてますよ?」
いつもの仕返しと言わんばかりに笑って言う三木さんに、桐生社長は恥ずかしそうに悔しそうに「っ〜……」と言葉にならない声を飲み込む。
そして今度は私の腕を掴むと、グイッと引っ張った。
「わっ、社長!?」
「マユちゃん、行こう」
「でも、三木さんが……」
聞いてもらうだけもらって置いていくのは、と躊躇う。けれど、そんな私にも桐生社長は足をとめることなく歩き出してしまう。
一方では三木さんは『はい、どうぞ』というようにひらひらと手を振り見送った。