甘いささやきは社長室で



「好きだよ。君が、大好きだ」



繰り返す、愛の言葉。

逸らされることのないまっすぐな目が、揺らぐことのないその声が本物だと教えてくれる。



そんなに繰り返して、ああ、もう、悩んでいた自分がバカみたい。

彼の気持ちは、錯覚なんかじゃないんだ。

そう知ることができることが、ただただ嬉しくて、胸がいっそう愛しさで溢れていく。



「……しつこい男は嫌われますよ」

「うっ!」

「それにこんな公衆の面前で恥ずかしいこと言って、バカみたいです。本当、社長としてどうかと思います」



涙で濡れた顔のまま、淡々と厳しい言い方をする私に、先ほどまでの堂々とした姿はどこへやら。彼は「す、すみません……」と苦い顔をする。



いきなり現れて、こんなところで『好き』だなんて、ついていけない。どうしていいかわからない。

だけどひとつだけ、はっきりとわかることがある。



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