甘いささやきは社長室で
それからのふたりは、恋人として……というよりは、相変わらず“社長と秘書”としての毎日。
それは今日も変わらず、朝一番の社長室のデスクの上には、どんと積まれた書類の山がある。
「マユちゃーん?これはいったい……」
「最近社長が外出ばかりされていたので、たまりにたまった書類仕事です。全て目を通してサインをしてくださいね」
容赦なくきっぱりと言った私に、桐生社長は諦めたように「はーい……」と苦笑いで肩を落とす。
花音さんとの結婚話はなくなったものの、彼女のフォローのおかげでボヌール・竜宮との取引関係は変わることなく安定し、それならばと桐生社長のお父さんも納得したのだという。
そんなわけで、ひと安心しつつ、私と彼は恋人となったわけだけれど。
相変わらず、社長という立場の彼はみんなにへらへらとして、女性とふたりで食事にもいく。
そして秘書という立場の私は、それを見守りながら、時にこうして厳しくしている。