甘いささやきは社長室で
*5 (番外編)
僕に全部ください
『むしろ好きだと思えてしまうから、困る』
不器用な彼女に、想いを伝えて、聞いて、その日から僕たちの関係は“社長と秘書”から“恋人”となった。
これは、その日から3ヶ月ほどが経とうとしているある日のこと。
「ただいまー、戻ったよー」
いつものように、市場調査という名目のもと女性と昼食に出かけ、戻ってきた僕は声をかけながら社長室に入る。
すると出迎えたのは、今日も変わらず愛想のない彼女。
「おかえりなさいませ」
短いひと言で出迎えるその瞳は、涼しげというよりは冷ややかなものだ。
「お、マユちゃんごはんちゃんと食べた?また仕事ばっかりしてない?」
「お気遣いどうも。先ほど食べてきました」
「それはよかった。やっぱり女の子はもうちょっと肉づきがいい方が……」
そう言いながら、背筋を伸ばし立つ彼女の腰へ手を回す。が、その手はギュッとつねられ、痛みにパッと手を離した。