甘いささやきは社長室で



「そういった言動はセクハラです」

「セクハラって……僕たち恋人同士だった気がするんですけどー?」

「今この時間は社長と秘書です。オンとオフはきちんと切り替えるようお伝えしてあるはずですが」



笑顔ひとつみせずきっぱりと言われてしまい、僕はしょげながら席につく。



付き合って、3ヶ月。

氷の女王、と呼ばれているだけあって、甘さを見せない彼女は徹底してオンとオフを区切っている。



仕事後にふたりきりになると、それなりに恋人らしいムードにもなる。

けど、お互い毎日仕事に追われる身。僕にいたっては接待や食事会も多く、会える時間をまめに作れるわけでもない。

そう思うと、仕事中とはいえふたりきりの時くらいはもうちょっと甘い空気になってもいいと思う。



「……ていうかさ、思うんだけど」

「なにをですか?」

「それ!それだよ、それ!」



座ったまま彼女を指差す僕に、マユちゃんは意味がわからなそうに眉間にシワを寄せて首を傾げる。



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