甘いささやきは社長室で
「今日は外出デーだから。夕方に一旦帰るまで留守は任せた!んじゃ、いってきまーす」
「は!?外出デーって……ちょっと!」
呼び止める私の声などまったく気に留めず、彼は鞄を手にスタスタと部屋をあとにした。
その場に残された私は唖然とし、同じくその場に残された三木さんは、『いつものこと』というように苦笑いをこぼした。
な、なんなのあの人……。社長の立場を利用して、女性とデートばかりしてるわけ!?
しかも1日に何人も……ありえない!
あんなのがうちの社長だなんて。なにが『注目の若社長』よ!ただの親の七光り、女好きのチャラい金持ちじゃない!
「三木さん、私やっぱり……」
「さーて、今日から秘書として頑張りましょうね!ね!!」
私の顔から言いたいことなど丸わかりなのだろう。『やっぱり辞めたい』、その言葉を言わせないように、彼はから元気でかき消した。