甘いささやきは社長室で
そして、それから話すこと数十分……ようやく話を切り上げることが出来た僕は、人々の輪を抜け店内を歩き回っていた。
マユちゃん、どこ行ったんだろ……。
薄暗い店内と、並んだテーブルやたくさんの人。それらに阻まれながら、彼女の姿を探す。
どうか、マユちゃんが他の男に絡まれる前に……!
キョロキョロと辺りを見回すと、青白く光る大きな水槽の前に、すらりとした彼女を見つけた。
よかった、いた。
「マユちゃ……」
そう名前を呼ぼうとした、けれど。見ればこちらに背を向け水槽の方を見る彼女の隣には、椎葉社長の姿がある。
って、一歩遅かったか……!
グラスを手になにか話をするふたりの間に割り込むべきか、否か。様子をうかがうべく、近くの柱の陰に身を隠しふたりの会話に聞き耳をたてる。