甘いささやきは社長室で
「……少しは、嫉妬してくれました?」
「へ?」
「仕事とはいえ、女性とふたりで食事してばかりいるあなたにたまには仕返しです。少しは私の気持ちも思い知ってください」
……つまり、この前何も言わなかったのは、わざと?
もしかして君は、僕が思っている以上に心を寄せてくれているのかもしれない。
そう思うと、いっそう込み上げる愛しさ。
「……まいりました」
降参するように笑って伸ばした腕で、その体をそっと抱き寄せる。
人目につかないよう、柱の影にかくれてぎゅっと抱きしめる体は、折れてしまいそうなほど細い。
「……社長、一応仕事中です」
「ちょっとだけ」
ひと言注意はするけれど、強くは言わず、おとなしく抱きしめられる。
一見冷たくて、不器用で。そんなキミが不意に見せるあたたかさが、愛しい。
ずっと、ひとりでもいいと思ってた。
永遠なんてないのだから、最初から信じなければいいと思ってた。
だけど、今、思うよ。
その心が変わりゆくように、この心にも訪れる変化。