甘いささやきは社長室で



「おはよ、マユちゃん」

「……無駄に近づかないでください」



挨拶より先に警戒心を露わにする。そんな態度をされても、彼は不快そうな様子を微塵も見せることはない。



「そんな警戒しなくても。チューした仲じゃない」

「だから警戒してるんです!ていうか、したんじゃなくてされたんです!」



それどころか全く反省する様子のないその態度に私はキッと睨んで怒った。



くそ、この男……全く気にしてない、それどころか怒った私を見て喜んでいる。

ああもう、どんな顔をするべきか気にするだけ無駄!

こうなったらこっちだって開き直ってやるんだから。むしろそのチャラついた根性を叩き直してやる!



そうと決めたら実行だ。私はすぐ自分の荷物を秘書室に置き、社長室へ戻るとまずはその散らかったデスクの上を片付け始める。



「あれ、そのままでいいよー?適当に片付けるし」

「よくありません。身の回りがだらしないから中身もだらしなくなるんです。それに仕事の効率も落ちます」



キビキビと書類やファイルなど、種類ごとにテキパキと分けていく。

さらに少し埃の積もった棚の上や窓際なども綺麗に掃除し、テーブルの下など目につきづらいところも細かく掃除した。



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