甘いささやきは社長室で
近くて遠い気がします
頭上に太陽が輝く、今日も相変わらず天気のいい朝。
いつものように出勤するべく、身支度を終えアパートを出た私の足元にはまだ真新しい黒いパンプスが光っていた。
足にフィットして、履きやすいのはもちろん、ヒールが細めにもかかわらず歩きやすさも抜群。
なにより控えめなツヤのエナメルが高級感を漂わせ、自分の気をキュッと引き締めてくれる気がした。
「……貰ったものは仕方ない。履き潰してやるんだから」
そうそれはまるで、あのチャラチャラした男を踏むかのように。毎日毎日履いて働いてやるんだから。
心に決め、会社へ向かって強く一歩歩き出すと、カッと高いいい音が響いた。