甘いささやきは社長室で
「ぷはっ、もー、そんな怒ることないじゃんか……悪いとは思ったんだよ?けどあのイケメン社長に壁ドンされて『マユちゃんについて教えて』なんて迫られたら!言うでしょ!」
「あれに迫られたからって友達を売ったのね!?」
っていうかあの男は、社員相手になにしてるのよ!聞き方ってものがあるでしょ!
冷ややかな目で睨んだ私にほのかは「まぁまぁ」となだめるように笑う。
「あ、そうだ。お詫びといっちゃなんだけど、いい話持ってきたよ?」
「……いい話って、どうせ合コンでしょ」
「正解〜!」
やっぱり。ほのかがそうニヤッと笑う時には、大体合コン話を持ってきた時だ。呆れたようにボタンを押してエレベーターを呼んだ。
「取引先で佐々木食品ってあるでしょ?そこの営業の人たちなんだけど」
「佐々木食品……あぁ、結構大きい食品製造会社だっけ」
「そうそう!あそこの会社大きいし取引先も多いから結構安定してると思うよ?しかもイケメン揃いって話だし……どう?合コン行かない?」
私の重視する『安定感のある会社』を強調するほのかに、どうするか迷ってしまう。
合コン自体あまり得意じゃないのもあって普段は断ることも多い。けどほのかがこうして気遣って話を持ってきてくれたわけだし、条件の合う相手なら出会って損はないだろう。
けど、うーんどうしよう。
そう少し悩みながらなにげなく視線を外へと向けると、そこにはちょうどビルの前に車が一台止められた。