甘いささやきは社長室で




その翌日。仕事を終えた私の姿は、ほのかとともに駅近くのとある和風居酒屋にあった。

沢山の人が飲み食いをしてにぎわうそのお店の奥にある個室では、掘りごたつの形をした席で男女それぞれ5名ずつがランダムに座っている。



「じゃ、とりあえずカンパーイ!」



男性側の幹事らしい人の声に、皆も「かんぱーい」とグラスを合わせた。



女性は私とほのか、そして社内のほのかの友人が3人ほど。男性は全員が佐々木食品で働く、30代前後の人たちだ。

スポーツ系からかわいい系まで、幅広い見た目のスーツのよく似合う彼らはにこやかな笑顔を見せている。



「隣、いい?」



その中で、一番端に座っていた私の隣へ座ったのは、ひとりの男性。

少しがっちりとした体に黒髪の彼は、細めの目をした愛嬌のある顔で微笑む。



「あ……はい、どうぞ」

「ありがと。確か真弓さん、だよね?平山です、よろしく」



先ほど行った短い自己紹介できちんと名前を覚えてくれたらしい。彼……平山さんは、改めて名乗り、ビールの入ったグラスに口をつけた。


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