甘いささやきは社長室で



「向井さんの同期なんだって?何課で働いてるの?」

「秘書課です」



短い答えで終わらせようとした私に、目の前で会話を聞いていたらしいほのかはすかさず言葉を付け足す。



「絵理、うちの桐生社長の秘書なんですよ!すごいですよねぇ」

「ちょっと、ほのか」

「社長秘書?すごいじゃん、出来る女って感じ?」



余計なこと言わないでよ、と睨む私にも、ほのかは気にすることもなく、自分たちの会話に戻っていく。



人見知りもせず、コミュニケーション能力も高いほのかは、どんな会話にも入れるし人と人を取り持つのが上手い。

けど、余計なことまで言ってしまうのがほのかだ。



「桐生社長っていえば、この前も雑誌に載ってたよね。いつ見てもかっこよくて羨ましいよ」

「顔だけですけどね」

「あはは、手厳しいなぁ」



笑顔ひとつなくそっけなく言った私に、平山さんはそこからあれこれと話題を広げる。

仕事のこと、自分のこと、私のこと……。上手いその会話に自然と会話は弾んだ。



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