あなただけを、愛してる。
今回の結婚の話だってそうだ。
彼女が俺と結婚したいと社長に言いさえしなければ俺は政略結婚なんてしなくてよかった。
金井グループとの提携を打ち切ると脅しにもとれるようなことを言われなくて済んだんだ。
社長室にノックの音が響いた。
「はい」
多少心の乱れはあったが平常心を必死に保ってそういった。
社長室の扉が開かれると同時に金井メイの姿が目に映る。
唯子のために仕事を切り上げたのに、
俺の中にいろんなイライラが募っていた。
「機嫌でも悪いの?」
来客用のソファーに腰かけながら金井メイは小さく笑った。
「珍しいですね、晴さんあまり顔に出さないのに。」
俺自身がそのことに一番驚いている。
「そうですね。仕事でいろいろあったもので。」
あくまでも丁寧に返す。